1)エンハンサー比較解析(i)ナメクジウオ(Branchiostoma belcheri)のゲノムからgoosecoid遺伝子のプロモーター約4.5kbの領域を単離したところ、WntやActivinのシグナルには応答したものの、Lhx1やOtx2には応答しなかった。これは、Lhx1やOtx2によるgoosecoidの発現維持機構の獲得が脊椎動物系統での頭部オーガナイザーの獲得と関連している可能性を示唆している。 (ii)アフリカツメガエル(Xenopus laevis)のゲノムからchordin遺伝子の第2イントロン領域を単離し、そこにこれまで未知だったLhx1による転写制御領域が存在することを見出した。 2)ナメクジウオ胚のサンプリング2009年7月、愛知県赤羽根漁港にて性成熟したナメクジウオ個体をサンプリングし、その後受精卵を得て原腸胚等を固定した。一部はクロマチン標品にすることに成功したので、世界初のナメクジウオ胚を用いたChIP解析が行えるようになった。 3)Lhx1の機能解析(i)Lhx1の補助因子LdbとSsbpをイソギンチャク(Nematostella vectensis)から単離し、それらの機能が高度に保存されていることを見出した。また、Nematostella胚でLhx1がchordin制御していることを見出し、その制御軸の保存性が明らかになった。 (ii)ニシツメガエル(Xenopus tropicalis)の原腸胚を用いてLhx1およびOtx2の抗体を用いたChIP解析を行い、転写制御領域の濃縮が確認できたので、今後ChIPシーケンス解析を行う予定である。 (iii)抗Nematostella Lhx1抗体を作成した。今後ChIP解析への応用が期待できる。
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