研究概要 |
本研究は,ハードディスクドライブの1Tbit/inch^2を超える高記録密度化を実現するために,強磁性原子数個から構成される1nm級の強磁性ナノ接点を有する極薄の酸化物層(NOL:Nano-Oxide-Layer)を作製することで,ナノ接点中で発現するナノ狭窄磁壁型MR効果を用いた新規な次世代磁気読み取りヘッドの開発を行う。 理論で示されているMR変化率とバルクスピン非対称性(β)との関係を実験的に明らかにするため,FeCo合金(Fe濃度10%,30%,50%,70%)を用いたCPP-GMRからバルクスピン非対称性を,AlO_χ-NOLを用いたスピンバルブからナノ狭窄磁壁型MR変化率を求めた.これらの結果より,Fe_<50>Co_<50>において最も高いβ(0.81)が算出され,更にβ同様Fe_<50>Co_<50>において最も高いMR変化率(5%)が得られた.実験から得られたβとMR変化率の関係は,理論値と絶対値が大きく異なるものの,βの増加に対するMR変化率の増加率は理論とほぼ同じとなった. しかし,理論では100%得られるはずのMR変化率が実際得られたMR変化率はわずか5%と,実験結果はNOLの出来の悪さを示している.そこで,NOLの出来を直接評価できるconductive-AFM(atomic force microscopy)の測定手法を構築することにも注力した.導電性ダイヤモンドtipを用いたconductive-AFMのNOL表面観察により,NOL表面には0.05%~0.15%の占有率でナノ接点が生成されていることが明らかとなった.得られた電流像から,ナノ接点のサイズむら,電流強度むらが観察されており,これらのむらがMR変化率低減の原因となっていることも明らかにした.
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