マウス海馬神経回路には、NMDA受容体ε1サブユニットの分布量が異なる2種類のシナプスが、左右の海馬錐体細胞からの入力と個々の錐体細胞の上下に対応して非対称に配置されていることが当研究室において明らかにされた。また、内蔵逆位の性質を示すivマウスでは左右の海馬神経回路が右側異性を示すことも明らかになった。 これらを背景に、神経回路非対称性を形成・維持するシグナルの局在と実体の解明を目指して、マウス海馬スライス培養系を用いた研究を行った。 新鮮スライスで見出された神経回路の非対称性が培養スライスでも再現されているかを確認するために、電気生理学的解析を行った。しかしながら、培養スライスで神経回路の非対称性を再現することは困難であった。培養条件下では、新鮮スライスには存在しない特異な神経回路が形成されている可能性があり、これが培養スライスにおける神経ネットワークの再現を困難にしているものと思われる。 今後は、培養スライスをネットワーク研究に利用するには、更なる培養条件の検討等が必要であろう。
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