本研究では、DNAの特性を"鋳型"として活用した、新たなタンパク質連結体作製プロセスの確立を目指し、タンパク質機能を高度に集積化させたタンパク質連結体の作製を検討した。本方法論では、鋳型となる人工合成DNAと共に、タンパク質を鋳型上に一時的に固定化するために、特定のタンパク質に結合特異性を示すDNA(アプタマー)を利用した。これまでに、連結させるタンパク質としてトロンビンを選択し、トロンビン連結体の作製と連結場所の制御について実証した。また、塩基配列設計におけるリンカー長の検討や複合体形成に与える塩濃度の影響、トロンビンのみの連結体だけでなく、IgEを利用したDNAによるIgE-トロンビン連結体の構築による、異種タンパク質複合体の作製についても検討を行ってきた。 今年度はさらなる最適条件の検討と共に、多量体の分離精製、形状観測について検討した。結果として、作製したトロンビン連結体をサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で分離、精製し、原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、形状観測を行ったが、依然としてトロンビン連結体の画像取得には至らなかった。一方で、SECチャートを解析した結果、3量体構築(収率11%)の確認に成功し、分画が可能であることを明らかにした。また、分画した3量体、2量体は活性を保持した状態で結合していた。次に、異なるタンパク質として、IgEとトロンビンを選択し、IgE-トロンビン連結化の検討を行った。鋳型DNAがない、物理混合による架橋化では、全く架橋しないタンパク質同士を鋳型となるDNAを利用することで有意に連結化できることを明らかにし、様々なタンパク質連結体の創製へ応用できることを示した。 本研究では、鋳型DNAの配列設計により人工的にタンパク質の個数や連結順序が制御可能である点が大きな特徴であり、新たなバイオプロセスの構築とその応用性という観点から非常に興味深い結果が得られた。
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