研究課題
これまで当研究室では、ヒト正常線維芽細胞をモデル細胞として用い、細胞の老化とともに発現を変化させるタンパク質をプロテオミクス的アプローチにより16種類同定している。それぞれのタンパク質に相当する細胞老化関連遺伝子の発現は、細胞老化の進行とともに大きく変化することが定量PCR法により明らかとなった。本研究では、これら遺伝子のうち、細胞老化とともに発現増強することが明らかとなった7種の細胞老化関連遺伝子に焦点を絞り、炎症及び炎症性疾患への寄与を明らかにすることを目的として研究を行った。モデル細胞としては、ヒト正常線維芽細胞TIG-1細胞を用い、炎症性サイトカインとしてはIL-6に焦点を当てた。細胞老化因子・細胞老化関連遺伝子の発現は定量RT-PCR法により測定した。まずTIG-1細胞の分裂老化に伴う炎症性サイトカイン発現の変化を定量RT-PCR法により定量した結果、TIG-1細胞の分裂老化に伴いIL-6発現が顕著に増大していることが明らかとなった。次に、早期老化を誘導することが知られている炎症性サイトカインであるIL-6でTIG-1細胞を処理したところ、7種の細胞老化関連遺伝子の発現が顕著に増大していることが明らかとなった。以上の結果、細胞老化シグナルと炎症系シグナルに何らかのクロストークがあり得ること、またそのクロストークに当該細胞老化関連因子が寄与しうることが明らかとなった。そこでさらに、炎症を起点とする各種疾患の発症に対し、細胞老化関連因子が寄与しうるかを、疾患患者由来cDNAを用いた定量RT-PCR法により検証した。糖尿病患者組織由来cDNAを用いた解析の結果、ほとんどの細胞老化関連因子が炎症及び炎症を起点とする疾患の発症に対し、重要な寄与をしているものと考えることができ、これら細胞老化関連因子が新たな炎症性疾患マーカーあるいは創薬ターゲットになりうるものと考えられた。
すべて 2009
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J.Biochem. 146
ページ: 87-93
Biosci. Biotechnol. Biochem. 73
ページ: 311-315