本研究では、日本語の音読過程を表す認知モデルをコンピュータ上にシミュレーションモデルとして開発し、認知モデルの妥当性を検証すること、発達性読み書き障害の障害仮説の妥当性を計算論的に検討することを目的とする。21年度は、音読検査を実施し、小学校高学年児童における漢字二字熟語の音読、仮名音読における音読特徴の一部を調査した。そして、コネクショニスト・アプローチを用いて、日本語の音読過程を表す認知モデルを予備的に開発し、このモデルを用いて、小学校高学年の児童が示した漢字二字熟語の音読特徴を表すことが可能か否かを検討した。漢字二字熟語の音読における規則性と配当学年の影響力を調べたところ、小学校高学年の児童において、配当学年の効果のみ認められ、規則性の効果は有意傾向であった。したがって、少なくともコネクショニスト・アプローチを用いて漢字二字熟語の音読における規則性と配当学年の効果をコンピュータ上の音読モデルで再現可能なことが示されたのではないかと思われた。仮名音読における音読特徴については、単語長と語彙性の影響力を調べた。その結果、単語長効果、語彙性効果が認められ、単語長と交互作用の効果が有意であった。英語圏での先行研究により、単語長効果は非語彙的な処理を行う音読モデルであればコンピュータ上で再現可能なことが知られている。現在、非語彙経な処理を行う音読モデルを予備的に作成している段階である。21年度は、本研究の目的を達成するのに必要な基礎データを得ることができ、今後の方針をたてることができたのではないかと思われる。
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