研究課題
平成21年度の研究によって、日本語話者の小児の音読においても二重経路モデルの枠組みでしか説明できないとされている音読現象の一つ、単語長効果が確認された。そこで、平成22年度では、非アルファベット語の音読モデルとしては世界では初である日本語の二重経路モデル構築を目的に、オーストラリアにあるマコーリ大学認知科学センター(MACCS)にも渡航し、このセンターに所属しているMax Coltheart教授との共同研究を本格的に開始させた。この音読モデル構築に必要な実証的データを得るために、音読実験を行った。研究データの解析結果から、仮名を音読する際の音韻単位が音素ではなくモーラである可能性が高いこと、漢字を音読する際にも英語の音読モデル同様に非語彙経路が存在する可能性があること、また英語の音読モデルとは異なり、非語彙経路にはその漢字に対応する音を複数活性させるシステムを構築する必要がある可能性が示唆された。今後、本当に仮名音読時の音韻単位がモーラであるかどうかを確認する実験、また漢字刺激の処理を詳細に検討するために非語彙経路の出力が語彙経路にどのように影響を及ぼすのかということについて検討する実験を行う必要があることが明らかとなった。実証的研究データを増やし、日本語の二重経路モデルの構造をさらに詳細に推定し、計算論的研究でそのモデルの妥当性を実際に検討するという段階に進ませるための橋渡しとなる成果が得られたと思われる。
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音声言語医学
巻: 52(1) ページ: 26-31