研究課題
細胞内へ移行するHIV-1 Tatペプチドやオリゴアルギニンといったアルギニンペプチドが、タンパク質や核酸などの効率的な細胞内導入に広く応用され、薬物デリバリーへの応用や細胞生化学的研究におけるツールとしても世界中で注目を集めている。アルギニンペプチドの細胞内移行メカニズムに関して様々な知見は得られてきているが、その詳細に関しては未だ解明されていない。申請者らは、アルギニンペプチドが細胞へ流入する際、細胞膜表面上に、ある特異的構造物が形成されていることを新たに見出している。そこで本研究では、この構造物の解析を中心に、アルギニンペプチドの流入様式を明らかにし、得られた知見をもとに新たな細胞内導入ペプチドベクター設計を行うことを目的とする。今年度は、粒状構造物の膜構造に関してより詳細な知見を得るために、live-CLEM(correlative light-electron microscopy)法による電子顕微鏡観察を行った。ペプチドのインキュベート時間や温度といった条件を変えながら詳細に検討を行った。その結果、細胞表面粒状構造ができた箇所では多重膜構造のように電子密度が高い構造が観察され、これは脂質が集積した結果であると推察された。ペプチドを加えて粒ができてから1分後および5分後といった経時的変化の観察も試みたが、その構造に大きな違いは見られなかった。つまりこれは、アルギニンペプチドが細胞膜に作用してごく短時間で多重膜構造を形成することを示唆している。また、4℃でペプチドを投与した条件下でも同様に観察を行ったところ、同様な多重膜構造や電子密度が高い構造が観察された。このことから、低温でもアルギニンペプチドが細胞膜と相互作用することでこのような特異な構造を形成することが明らかとなった。
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