研究課題
アルギニン残基を豊富に含むアルギニンペプチドは、タンパク質や核酸などの効率的な細胞内導入に広く応用され、薬物送達への応用や細胞生化学的研究におけるツールとしても注目されている。アルギニンペプチドの細胞内移行メカニズムに関して様々な知見は得られてきているが、その詳細に関しては未だ解明されていない。申請者らは、アルギニンペプチドが細胞内へ流入する際、細胞膜表面上に、粒状のある特異的構造物が形成されることを新たに見出している。そこで本研究では、この粒状構造物の解析を中心として、アルギニンペプチドの細胞内流入様式を明らかにし、得られた知見をもとに新たな細胞内導入ペプチドベクター設計を行うことを目的とする。本年度は、細胞内送達技術という観点から、粒状構造物の意義を検討した。これまでに申請者は、粒状構造物を効率よく形成させるためにはアルギニンペプチドに適当な疎水性を付加させればよいことを見出している。そこで、本来膜透過性のない物質とともに、粒状構造物を効率よく形成させるアルギニンペプチドを細胞に投与することで、膜透過性のない物質の細胞内移行量が上昇するかどうか、および細胞内(サイトゾルや核)に拡散するかどうかをフローサイトメトリーおよび共焦点顕微鏡により検討した。その結果、粒状構造物を形成させることにより、10分間というインキュベーションで、本来膜透過性のないペプチドの細胞内移行量が顕著に増大し、また、細胞内での拡散も観察された。しかし、GFPなどのタンパク質レベルの高分子化合物においてはこのような結果は得られなかった。以上の結果から、粒状構造物形成は、本来膜透過性のない比較的小分子の化合物を効率よくサイトゾルや核に短時間で送達することができる可能性が示唆された。
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Molecular Therapy
巻: (in press)
10.1038/mt.2011.313