2010年2月より研究対象地域であるスーダン共和国・ハルツーム大学へ滞在、現地調査を実施している。今年度はまず資料調査として、墓域データ/土器実測という2つの資料調査のために世界各地の研究施設(オックスフォード大学・大英博物館・ボストン美術館・ペンシルバニア博物館・スーダン国立博物館・シェンディ大学・シェンディ考古局)・を訪れ、いずれにおいても未出版資料を入手した。また発掘調査をメロエ・サイ島という2か所で実施し(前者はハルツーム大学と、後者はフランス考古学研究所との共同調査)出土資料の分析を進めている。したがって、博士論文執筆に向けた一次資料の獲得という点においては極めて順調である。スーダン国内各地に眠る未出版資料は、その価値にも関わらずアクセスが極めて困難な点が障害となってこれまで本格的な検討がなされたことはなかった。これら資料を自ら集成・分析することで、実証性を保ちつつ広範囲にわたる研究が可能となる。 また個人研究としては、今年度の8月にロンドンで開催されたヌビア会議で研究成果を発表した。本研究において筆者は墓のセリエーション分析を通じてメロエ期を独自に3区分し(メロエI期・II期・III期)、各時期間に生じた社会的変化を考古学的に素描した。結果として現在の世界的研究水準に照らし合わせても、この編年的枠組みが依拠するに足るものであるという実感を得た。したがって予定通り、後続する研究も自らの編年を基準として展開してゆく。
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