研究概要 |
本研究は時計遺伝子Cryptochrom(Cry)1Cry2ダブルノックアウトマウスの中枢時計、視交叉上核(SCN)の培養系を用い単一神経細胞レベルでのリズム発振を解析することにより、細胞内概日リズム発振メカニズムにおけるCRYの役割を明らかにすることを目的とする.昨年度は,生物発光および多電極ディッシュを用いてSCN培養スライスにおける個々の細胞リズム発振にCRYが必要ではない事を明らかにした.昨年,単一細胞レベルでの細胞間ネットワークの重要性を示唆する論文が報告された.このため,本年度はSCNの細胞間ネットワークを極めて弱くした状態である分散培養を行い,時計遺伝子Per1発現リズム及び自発発火リズムを単一細胞レベルで存在するかを検証した. 生後2-5日齢のマウスからSCNを切り出し,トリプシンにて分散させ,ペトリディッシュまたは多電極ディッシュにまいた.細胞密度は平均250cell/mm^2と1,100cell/mm^2の二種類を設定した.いずれの密度においてもCry1^<-/->/Cry2^<-/->マウスのSCNの細胞は有意な概日リズムが認められた.このことは,SCNの細胞間ネットワークがなくても,SCNの個々の神経細胞自体に概日リズムが存在する事を強く示唆する. 昨年度,Cry1^<-/->/Cry2^<-/->マウスのSCNでは,Per1発現リズムと自発発火リズムが乖離する事を明らかにしたが,これらの結果は異なるスライスでの結果である.直接乖離があるかどうかを示すためには,同一SCNスライスでPer1発現リズムと,自発発火リズムを測定すべきである.そこで生物発光と多電極ディッシュを組み合わせ,同一SCNスライスからPer1発現リズムと自発発火リズムの同時測定を行い,これらの乖離を明らかとした.この結果は,SCNにおける時計遺伝子Per1発現と自発発火では異なる細胞間ネットワークが存在する事を強く示唆する.
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