これまでに、接着斑に局在すると考えられていたアダプター型の接着領域裏打ちタンパク質であるビネキシンが特定の条件下で繊維状接着構造に局在することを見出している。そこで、接着斑と繊維状接着構造形成の決定にアダプター型の接着領域裏打ちタンパク質がどのように関与しているのかを検討している。ビネキシンはビネキシンファミリーを形成し、類縁のタンパク質としてCAPとArgBP2が存在する。平成21年度はビネキシンファミリー間での機能の違いを明らかにするために、ビネキシンファミリータンパク質のクローニングを行った。その結果、新規バリアントを含む2種類のCAPとArgBP2のクローニングに成功した。これらのビネキシンファミリータンパク質を線維芽細胞に発現させ、免疫染色でその局在を確認したところ、ビネキシンは接着斑に、CAPは接着斑及び繊維状接着構造に、ArgBP2はアクチンストレス繊維上に主に局在していることが分かった。 また、ブタ近位尿細管由来のLLc-PK1細胞をTGF-βで処理するとフィブロネクチンとSMAの発現量上昇と、E-cadherinの発現量低下がみられ、上皮間葉転換が引き起こされることを見出した。この時ビネキシンとビネキシン結合タンパク質Dlg5の発現量も低下することも見出した。そこで平成21年度はDlg5が関与する上皮間葉転換の制御メカニズムについても解析を進めた。その結果Dlg5がTGF-β受容体からJNKへのシグナルを抑制することで、E-cadherinやフィプロネクチン、.SMAの発現量を調節し、上皮間葉転換を抑制する働きを持っていることを明らかにした。
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