研究概要 |
<具体的な研究内容> イネは2004年に日本晴の全ゲノム塩基配列が解読され、遺伝子の同定および機能解析が盛んに進められている。近年は、次世代シークエンサーを用いた比較ゲノム解析により、コシヒカリおよび雄町と日本晴との間において、それぞれ約67,000箇所、約130,000箇所の一塩基多型(SNP)が同定された。しかし、短いリードをReference genomeにマッピングし、小さな変異を同定する手法では、欠失、挿入、逆位等、大きな構造変異を同定することはできない。そこで本研究では、銀坊主のゲノム配列を高い精度で解読、新規コンティグを用いた比較ゲノム解析により、多様なゲノム構造変異についても明らかにした。 イネ品種銀坊主を用いて、二種類のライブラリー(500bpのPair endlibrary、3kbのMate pair library)を作成、Hiseq2000によりシークエンス解析を行った。得られた配列を、日本晴ゲノム配列にマッピングした後、123,299か所のSNP、43,480箇所の短い欠失および挿入を同定した。さらに、複数のソフトウェアを組み合わせ、数100bpから数100kb以上に及ぶ大きな構造変異を1500箇所以上同定した。その後、銀坊主の新規コンティグを作成し、マッピング解析により得られた構造変異の妥当性を検証した。確認された構造変異の70%は、転移因子配列の切り出しもしくは挿入によるものであり、転移因子を介して生じたと思われる逆位も複数存在した。 <意義および重要性> 今回の研究結果から、イネ近縁品種間において大規模なゲノム構造変異が多数存在していること、並びに、このような構造変異に転移因子が密接に関与することを明らかにした。これは、自殖性作物であり遺伝的均一性の高いイネにおいて、転移因子を介したダイナミックなゲノム進化が短期間に進行することを示す重要な成果である。
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