研究概要 |
本研究課題では,脳の形態形成および神経発生に関与する分子メカニズムを解明することを目的としている.そこで、私はマウス大脳皮質発生におけるSbnolの機能ついての研究成果を報告する。 Sbnolの特異的抗体を用いた免疫染色の結果、大脳皮質において分化過程にあるニューロンでは、Sbnolは核に局在し、その一方で、成熟ニューロンでは細胞質に発現していることが示唆された。また、大脳皮質発生においてSbnolの発現が翻訳段階で制御されていることが示された。 Sbnolに対するRNAiを用いた遺伝子阻害実験および過剰発現実験の結果より、Sbnolは脊椎動物の神経分化において必須であることが示された。さらに、Sbnolが核内でNotchシグナルを抑制することでニューロン分化を促進する因子であることが示唆された。 また、Sbnolの生化学的機能についての知見を得るために、Sbnolの3つの高度に保存された領域をbaitとし,zebrafish cDNAライブラリーをpreyとしてSbnolと結合する因子をYeast two-hybrid(Y2H)スクリーニングで同定した。その結果、Y2Hによって、Su(H)を含むいくつかの遺伝子が単離され、Su(H)とSbnolが結合することが示された。 さらに、Su(H)とsbnolとの具体的な相互作用部位を同定したところ、Su(H)のC末953-1034a.aが両者の結合に必須であること示された。またこの領域は進化的に保存されているものの機能としては不明であった。しかし、本研究結果より、この配列がsbnoとの結合に必須であることが示唆されたことから、Su(H)の新たな機能ドメインとしての役割が期待される。
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