研究課題/領域番号 |
09J03047
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
杉川 幸太 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC1)
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キーワード | 多糖 / カーボンナノチューブ / ポルフィリン / 階層構造制御 / 光電変換 / 自己組織化 |
研究概要 |
申請者はゲスト包接能を有する半人工多糖である6位修飾カードランを用いて、ゲスト分子の基板上での垂直配向を目指し研究を行ってきた。前年度までに(1)カチオン性のカードラン(CUR-N^+)がアニオン性色素分子であるメロシアニン540と複合体を形成しその光退色性を抑制すること、(2)イオン性のカードランが鋳型分子として機能し一次元金ナノ構造体および孤立分散したポリピロールを合成できることを明らかにした。これらの研究成果を元にCUR-N^+とカーボンナノチューブ(CNT)の複合体(CUR-N^+/CNT)とアニオン性のポルフィリン分子を混合することで、複合体の階層構造制御を試みた。 4つのスルホン酸基を有するポルフィリン(H_4TPPS^<2->)の水溶液(pH=3.4)にCUR-N^+/CNT複合体を添加するとH_4TPPS^<2->が静電的に相互作用し、一次元に会合することが明らかとなった。またTEM観察の結果、CNTがバンドル化した構造体が観察され、H_4TPPS^<2->の会合形態とCNTの組織化が同時に制御できることが示された。この溶液のpHを中性に戻すとH_4TPPS^<2->の一次元会合が崩壊し、それと同時にCNTの配向性が低下することが明らかとなった。この構造変化は可逆的であり、pHを3.4に戻すことで再びH_4TPPS^<2->が一次元に会合し、CNTが規則的に配向した組織体が構築された。H_4TPPS^<2->のプロトン化及び脱プロトン化がH_4TPPS^<2->とCNTの会合状態に影響を及ぼしていると考えられる。蛍光スペクトル及び蛍光寿命測定の結果、H_4TPPS^<2->からCNTに電子移動が起きていることが明らかとなり、光電変換素子として応用できることが示唆された。 今回申請者が得たCUR-N^+を介したポルフィリン分子及びCNTの組織化に関する知見は、本研究課題であるゲスト分子の垂直配向を目指す上で極めて重要なものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ゲスト包接能を有する半人工多糖である6位修飾カードランを用いて、ゲスト分子の基板上での垂直配向を目指し研究を行ってきた。イオン性部位を導入した6位修飾カードランの基礎物性を明らかにし、近年では鋳型としての応用やカーボンナノチューブの組織化に成功した。これらの実験により得られた知見は本研究目的を達成するのに重要なものであると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により6位修飾カードランのゲスト包接能や複合体の組織化に関する基礎的な知見を得ることに成功した。今後は6位修飾カードランを基板表面に修飾する技術の開発を行う必要がある。
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