平成21年度は、「代表/表象(representation)」に関するジェンダー/フェミニズム理論の知見を整理した上で、本研究を行うための分析視角を設定し、事例分析を行った。第一に、ジェンダー/フェミニズムの視点に立った代表/表象研究が依拠している認識論および研究アプローチを、フェミニスト経験主義、フェミニスト立場理論、フェミニスト・ポストモダニズムという三つのグループに分け、それぞれのアプローチの強みと限界について考察した。その結果、フェミニスト・ポストモダニズムに依拠した分析アプローチをとることが有用であることが分かった。そして、現代日本における女性の政治アクターの代表/表象実践を通じて、どのような女性が代表されるべき主体として構築されているのかを分析することが重要であると考えた。このような考察に基づき、新聞報道および政党機関誌の資料を収集し、政治的領域において女性がどのように表象されているかを経験的に分析した。その成果を、平成21年9月にカナダ・トロントで開催されたアメリカ政治学会(American Political Science Association)で発表した。 本発表では、1990年代以降の日本が、既存の生産・福祉レジームを支えてきた「男性稼ぎ主型」のジェンダー体制を変革するという政治課題に直面したことを説明し、その改革の担い手として女性に注目が集まり、政治的領域における女性の位置が、周辺化された存在から正統な政治アクターへと変化したことを論じた。さらに、本発表を日本語に翻訳し、衆議院に立候補した女性候補者の選挙公報という新しい資料の分析を追加した論文を執筆し、平成21年3月に学会誌に投稿した。
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