本研究では、ポリエチレングリコール(PEG)の末端にポリ(4-ビニルベンジルフォスフォネート)のブロック構造を有するブロック共重合体(PEG-b-PVBP)を、希土類含有酸化イットリウム(Y_2O_3)ナノ粒子の表面に固定することで、in vivo環境で高い安定性を有する近赤外光バイオイメージング用ナノ粒子を作製した。表面未修飾のY_2O_3ナノ粒子は、血清タンパク質共存下では容易に凝集・沈降してしまうため、血中への投与が困難であるのに対して、PEG修飾Y_2O_3ナノ粒子は血清タンパク質共存下でも極めて安定に分散できることが、in vitro環境における実験により確認された。さらにこのPEG修飾Y_2O_3ナノ粒子を実際にマウスに尾静脈投与し、24時間後に近赤外カメラを用いてイメージング実験を行った。この結果、生きたマウスを解剖することなく、体内の肝臓や脾臓等の臓器をイメージングすることに成功した。これらの結果から、作製したPEG修飾Y_2O_3ナノ粒子は、血中環境において安定して分散し、生体内をイメージングできることから、血中投与による生体深部のイメージングへの利用が期待される。さらに本研究者は、2010年5月から10月まで、アメリカ・ネブラスカ大学メディカルセンターにて研究留学を行った。現地では、PEG-b-PVBPとカチオン性界面活性剤、または抗癌剤(ドキソルビシン)を用いてコンプレックスを形成し、PEG-b-PVBPのドラッグデリバリーキャリアへの応用を図った。作製したコンプレックスは高い抗癌剤内包量とpH依存的な薬物リリース挙動を示し、新たなドラッグデリバリーキャリアとしての利用が期待される。
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