免疫系の中枢を担うT細胞は、外界からの異物の排除のためにエフェクター細胞へと分化した後も、異なるエフェクター細胞へと再分化するような高い可塑性を有している。実際、type1免疫応答によって産生されるIFN-γはIL-17を産生するtype17免疫細胞の誘導を著しく抑制する。しかしながら、私はCD8+T細胞依存的大腸炎モデルにおいてIL-17とIFN-γを同時に産生するIL-17/IFN-γ-double positive CD8+T細胞の存在を見出しており、これはこれまでの知見に照らし合わせてもその誘導メカニズムは説明できない。これまでに、このIL-17/IFN-γ-double positive CD8+T細胞が、Tc17細胞にIL-12を加えることによって高頻度にこの細胞群を誘導することができ、これらがtype1、type17免疫応答のマスター転写因子であるT-bet、RORγtを同時に発現していることを明らかにしてきた。そこで今回、私はこの細胞群の誘導メカニズムの検討を行った。IL-17産生細胞は本来、IL-12のシグナルが入るとIFN-γの産生が誘導され、IFN-γ/STAT1経路を介してSTAT3の活性を抑制するSOCS3が発現する。このことによりIL-17産生が抑制されて結果的にIFN-γsingle positive細胞へと分化することが知られている。しかしながら、IL-17/IFN-γ-double producing CD8+T細胞ではSocs3のプロモーター領域が転写抑制性のエピジェネティック修飾を受けているためにその発現が抑制され、IFN-γ/STAT1シグナルが入ってもSTAT3の活性化が阻害されないためにIL-17とIFN-γが同時に産生されるということを明らかにした。
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