研究概要 |
線虫C.elegansの胚発生初期過程で見られる様々なサイズの割球(細胞)を用いて、紡錘体が伸長する様子を定量的に観察・測定した。この研究成果を中心として、細胞の大きさと細胞内小器官の大きさの関係とその制御機構について、既存の知見をまとめ教科書の一章を執筆し投稿した(Hara & Kimura, Springer社より2011年出版)。さらに、これまで行ってきた解析結果を基に、「紡錘体の形(縦横比)」と「凝縮後染色体のサイズ」の制御機構に関する新たな解析を行った。紡錘体の形に関しては、線虫初期胚において様々な細胞における紡錘体の形状の定量化を行い、従来一部の研究者の間で信じられてきた「縦横比一定則」が成り立たないことを明確に示した上で、実細胞における縦横比について成り立つ新たな法則性を発見した。また、RNA干渉法により縦横比の決定因子の同定に成功し、紡錘体の形を決定するための新たな制御機構を提案する予定である(論文投稿準備中、この研究成果に関して、3件の学会発表(国際学会での発表2件を含む)を行った)。また凝縮後染色体サイズに関しては、様々な発生段階の染色体サイズを定量的に測定することにより、細胞核のサイズと染色体サイズの間に相関関係があることを世界で始めて明らかにした。また、RNA干渉法を駆使し、細胞核の空間が物理的な制約として働き染色体サイズの決定に影響を与えうる可能性を指摘し、新規の制御機構を提示する予定である(この研究成果に関して、2件の学会発表を行った)。このように、線虫初期胚に大きく変化する紡錘体のサイズ、形、それに関連する染色体サイズの制御機構の解明に関して、世界に先駆けた研究成果が得られたと自負している。
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