太陽から最も頻繁に放射される電波バーストの一つにType-Iがある。この現象は他の太陽電波現象に比べて強度の弱い微弱な太陽電波現象である。Type-Iはコロナ中で高エネルギーに加速された電子から放射されていると考えられているが、その電子を高エネルギーに加速する過程はいまだ明らかになっていない。本研究では微弱な太陽電波Type-Iを発生させる高エネルギー電子の加速過程を解明することを目的とし、地上電波観測を中心とした研究活動を行った結果、本年度以下の成果が得られた。 1、新太陽電波観測システムの立ち上げおよび初期観測 申請者が修士課程から開発を続けている新しい太陽電波観測システムの最終的な立ち上げ作業を行った。立ち上げ作業ではまず修士課程までに開発してきたアンテナの給電部・受信系・制御記録系を組み合わせて装置全体を完成させ、次に装置全体の特性を実験で計測した。その結果、設計通りの性能を有していることがわかった。これは2009年現在で世界最高性能の太陽電波バースト偏波スペクトル観測機器であることを意味する。その後本装置による太陽電波連続観測を開始し、2009年12月以降複数の太陽電波バースト現象の観測に成功している。 2、ひので衛星の画像解析とのキャンペーン観測の提案 日本が打ち上げた太陽観測衛星「ひので」には軟X線望遠鏡が搭載されている。電波発生時には軟X線でも変動があることが理論的に予想されている。そこで電波バーストが観測された時間のひので衛星X線望遠鏡のデータの解析を行った。その結果ひので衛星の通常の運用方法による観測では、Type-Iバーストと軟X線の対応関係が得られないことが分かった。この成果は現在英文の雑誌に投稿し査読中である。この結果を受けて、申請者が開発した地上電波望遠の観測時に、ひので衛星が特殊な観測を行うキャンペーンプロポーザルを名古屋大学と共同で提出し、採択された。現在バースト現象の発生を待っている状況である。
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