太陽から最も頻繁に放射される電波バーストの一つにType-Iがある。この現象は他の太陽電波現象に比べて強度の弱い太陽電波現象である。Type-Iはコロナ中で高エネルギーに加速された電子から放射されると考えられているが、その電子を高エネルギーに加速する過程はいまだ明らかになっていない。これら高エネルギー粒子の生成過程は、太陽コロナの物理を議論する上で極めて重要であるとともに、未知の加速課程の発見につながる可能性がある。そこで本研究では微弱な太陽電波バーストType-Iを発生させる高エネルギー電子の加速過程を解明することを目的とし、地上電波観測を中心とした研究活動を行ってきた。その結果、本年度に以下の成果が得られた。 1:観測システムの連続運用・データアーカイブ化 本研究では微弱な電波強度で微細なスペクトル構造を伴い放射されるType-Iバーストを効果的に観測するための電波観測装置(IPRT/mmTERAS)を開発した。連続運用フェーズに移行した本年度は、全自動運用システムの開発・観測データのアーカイブ化・データ公開システムの構築と装置論文の執筆を行った。その結果、全自動での運用およびデータアーカイブ化に成功した。また観測データは観測日中にWebから公開することが可能となった。 2:超微細Type-Iバーストの発見 Type-Iには継続時間1秒未満の微細なスペクトル構造が多数含まれていることが知られている。本研究ではType-Iの微細なスペクトル構造に注目し、Type-Iの高分解スペクトル観測を行い、そのデータの解析を行った。その結果Type-Iには今まで連続成分とみなされた電波成分にも多量の微細バーストが含まれていることを発見した。加えてType-Iバースト成分の統計的特徴に注目し、電波強度の発生頻度解析を行った。その結果、バースト成分の電波強度は幕状分布し、その指数は-2から-3と通常のType-III電波バーストやフレア現象よりスペクトルが急峻であることが示唆された。
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