研究課題
2型糖尿病の発症において、膵β細胞量のアポトーシスによる減少が重要な役割を果たすと考えられている。日本人の2型糖尿病に類似したインスリン分泌不全型の糖尿病を呈する膵β細胞特異的グルコキナーゼヘテロ欠損マウス(GK^<+/->)を用いて、食事中の糖の主成分であるスクロース(S)と主要な脂肪酸であるオレイン酸(0)、リノール酸(L)をそれぞれ組み合わせた食餌(S0、SL)による膵β細胞への影響を解析した。さらに、膵β細胞量保護の観点からみた糖尿病発症機構解明および治療応用につなげるべく、上述したモデルにDPP-4阻害薬を投与し、膵島への作用および膵外作用について検討した。結果として、スクロースとリノール酸とを組み合わせた食事による、膵β細胞の小胞体ストレス誘導・アポトーシス、内臓脂肪へのT細胞・マクロファージ浸潤による炎症惹起、および肝臓への脂肪蓄積による脂肪肝と、多臓器におけるglucolipotoxicityモデルを確立することに成功した。食事誘導性の膵β細胞アポトーシスモデルとして、糖尿病の発症機構解析に非常に有用であると考えられた。また、DPP-4阻害薬は膵島、脂肪組織および肝臓と、多臓器における食事誘導性のglucolipotoxicityに改善作用を持つことを証明した。膵島に対してはGLP-1を介した小胞体ストレスおよびアポトーシスからの保護し、膵β細胞の増殖を促進させ膵β細胞量を増加させた。肝臓に対してはGLP-1を介した脂肪合成系酵素発現調節による肝臓内脂肪蓄積の抑制を示した。脂肪組織に対しては炎症性細胞に対するDPP-4酵素活性阻害による、内臓脂肪の炎症軽減の可能性が示唆された。以上の結果よりDPP-4阻害薬は、生理的な食事による膵β細胞アポトーシスモデルにおいて膵β細胞のアポトーシスを抑制し膵β細胞量増大に作用する可能性が示唆された。これらは、膵β細胞量保護の観点からみた2型糖尿病治療につながると考えられる。
すべて 2010 2009 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (5件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Endocrine Journal 57(3)
ページ: 259-266
http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~nai3naib/