研究課題
食事誘導性の膵β細胞アポトーシスモデルにDPP-4阻害薬を投与し、膵島への作用および膵外作用について検討した。GK^<+/->マウスに、DPP-4阻害薬を添加したSLを20週間投与したところ、糖負荷試験にて耐糖能の改善を示すとともに、膵島における膵β細胞量低下、膵β細胞アポトーシスの抑制、および膵β細胞の増殖能亢進が認められた。また、DPP-4阻害薬投与により脂肪組織へのM1マクロファージおよびCD8陽性T細胞浸潤が改善した。このことより、DPP-4阻害薬は食事により誘導される膵β細胞の小胞体ストレスおよびアポトーシスを阻害することにより、膵β細胞を保護し、内臓脂肪の炎症も抑制することが明らかとなった。さらに、DPP-4阻害薬により、肝臓における脂質合成酵素の発現低下、および肝臓内の中性脂肪含量低下による脂肪肝の改善効果も見出している。また、小胞体ストレスによる糖尿病発症モデルであるAkitaマウスを用いて、新規糖尿病薬であるグルコキナーゼ活性化薬の効果を検討した。小胞体ストレスよる膵β細胞のアポトーシス(細胞死)が、膵β細胞の低下につながり、2型糖尿病の発症原因の1つとなる。グルコキナーゼ活性化薬は、Akitaマウスの血糖を低下させ、膵β細胞の小胞体ストレス分子であるCHOPの発現を抑制した。さらに膵β細胞のTUNEL陽性のアポトーシスを生じている細胞も有意に減少させた。また、マウスの膵臓より膵島を単離し、グルコキナーゼ活性化薬の小胞体ストレス存在下における膵島への直接作用を検討した結果、CHORCEBP-βの遺伝子発現が抑制され、小胞体ストレスを減弱させていることが示唆された。以上のことより、グルコキナーゼ活性化薬は、Akitaマウスの糖尿病発症を抑制するだけではなく、膵β細胞の小胞体ストレス誘導性のアポトーシスも抑制することを見出した。これらの結果より、グルコキナーゼ活性化薬が血糖降下薬としてだけではなく、膵β細胞保護による糖尿病の根本治療へ応用が期待された。
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http://www-user.yokohama-cu.ac.jp/~nai3naib/