木星内部磁気圏には、多数の火山を持つ衛星イオが存在する。イオでは、多量の火山性ガス発生し、電離したガスはイオ重力圏を脱出し、木星磁気圏プラズマとなる。太陽風によってプラズマが供給される地球の磁気圏とは異なり、「イオ山→イオ大気→イオ電離圏→木星内部磁気圏→木星中間・外部磁気圏」というプロセスが存在することが予想されるが、このプロセスが定量的に示されたことは未だかつてない。本特別研究員は、シンガポールで行われた国際学会AOGSや、幕張で行われた日本地球科学連合学会、金沢での地球電磁気・地球惑星圏学会で、情報収集を行い、木星磁気圏についての最新の研究結果を得た。これらの情報を踏まえた上で、チリ・東京大学アタカマ天文台に於いて、中間赤外線観測でイオの火山活動度を測定し、所属研究室のハレアカラ高高度無人観測所で、イオ電離圏イオンが流出再中性化して生じるナトリウム雲の観測を行った。観測機器の不調などの困難もありながら、国内グループとしては初めて、イオの火山活動の変化の検出に成功し、また、火山活動による温度変化についてもデータを得ることができた。イオの火山活動に応じて、ナトリウム雲の規模が変化していることも突き止め、磁気圏へのプラズマ供給がイオの火山活動に敏感に反応することを示唆した。これは、木星磁気圏環境が、地球のように太陽風だけに依存するものではない、複雑なものであることを示す新しい結菓である。また、所属研究室で過去10年に渡って得られている木星磁気圏の光学観測データを解析し、過去の研究では見られていないような、イオの火山が原因と思われる短期変動を見出した。この詳細についてついて論文を執筆し、現在投稿・審査中である。
|