近年、金属ナノ構造を利用したプラズモニックデバイスの研究開発がさかんに行われている。昨年度までに、金属のナノ構造をナノインプリント法により精緻な構造を一括、大面積に作製した。これをマイクロフルイディクス中に実装することにより疾病マーカーの一種であるTNF-αの測定を行った。一方これらの金属ナノ構造は金属薄膜で構成されていることから、作用電極として同時に用いることが可能であり、電気化学的な側面からも研究が行われている。通常SPR法を用いた小分子の測定は測定の原理上難しいとされているが、金表面に修飾したレドックス膜を用いることでシグナルの増幅に成功した。そこで本年度は、昨年度に作製した金ナノホール構造を作用極としても使用できるようなデバイスを構築し、その表面にオスミウム錯体を修飾し電位を走査したときの反射光中のSPRディップの挙動を解析した。FE-SEMを用いて観察した金ナノホール構造から、直径300nmのホール構造が正確に転写されていることを確認した。続いてOs-gel-HRPを修飾する前後の反射スペクトルを観察した。膜修飾前の反射スペクトルより730nm付近に鋭いディップを確認することができた。これは表面プラズモン共鳴による光の吸収のためによると考えられる。一方膜を修飾すると、ディップ波長は約20nm長波長側にシフトした。同時にディップの形状がブロードに変化した。ディップ波長のシフトとサイクリックボルタモグラム(CV)の同時測定の結果より、酸化電流が測定されるに従い、ディップ波長が低波長側にシフトされることを確認した。また還元電流が測定されるに従いディップ波長が長波長側にシフトした。電位スキャン後、ディップ波長は再び測定前の波長に戻ることを確認した。最後に検討したデバイスを用いて、モデル物質である過酸化水素の測定を行った。その結果10-250μMの濃度領域において過酸化水素濃度の定量が可能であることが示された。
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