本研究では、フィランソロピー活動及び非営利活動における意思決定のメカニズムについて、経済学的見地に基づき理論的・実証的に明らかにするとともに、活動に関わる主体のインセンティブを高めるための制度・政策設計の在り方を検証することを目的とするものである。政府・家計・民間非営利組織の主体間の関係性に関する学術研究や、公共サービスの供給システムや財源調達における政策的議論の必要性が高まっていると考えられるが、日本では当該分野における経済理論や実証分析を用いた研究の蓄積が浅く、分析に必要な統計の整備も遅れている。そこで本研究では、既存研究から分析の理論的枠組みを整理するとともに、アンケート調査による個票データやマクロデータを用いて、日本独自の実情や制度的特徴を考慮した要因分析や制度分析を行う。これらの分析から、非営利活動およびフィランソロピー活動を取り巻く主体の意思決定要因や行動メカニズムに関する客観的把握と活動促進のための方策が明らかになることが期待される。また、日本独自の要素や特徴を踏まえ、実態と照らし合わせた解釈や制度構築・改善に関する具体的な提言を行い、現行の法制税制の潜在的効果に対する議論の視点および方向性を提供することが期待される。 今年度は、フィランソロピー活動に関する経済理論と活動参加の要因分析に関する既存文献を網羅し、本研究の分析における経済学的枠組みをフォローすることに努めた。また、理論・実証分析のためのモデルを検討・導出し、マイクロ・データを用いた、寄付とボランティアの決定要因や政府支出と民間寄付の関係(クラウディング・アウト効果)に関する実証分析を行った。さらに、それらの研究成果を学会や研究会等で報告し、国内外の学術誌への投稿を行った。
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