本研究の初年度に、自記式食事歴法質問票(self-administered diet history questionnaire : DHQ)から抽出される食品摂取パターンの妥当性が確認できたことにより、DHQを用いて食品摂取パターンと健康指標との関連を疫学的に検討することが可能となった。そこで本年度は、複数の観察疫学研究の既存データを活用して、食品摂取パターンと健康状態との関連について検討した(産後うつ病、小児のアレルギー、栄養適正)。スペースの関係上、産後うつ病との関連についてのみ記述する。 2001年11月から2003年3月に大阪府寝屋川市とその近隣に在住する865名の妊婦から協力を得て収集したDHQならびに生活習慣全般に関する既存データベースを活用した(大阪母子保健研究)。妊娠中の食品摂取パターンを抽出するために、DHQに収載されている147食品を各食品の特性および栄養成分の類似性を考慮しながら33食品群に分類し、因子分析に投入した。産後うつ病の判定には、産後2~9か月時に日本版エジンバラ産後うつ病自己評価票を用いた。そして、9項目以上に該当する場合を「産後うつ病」と定義した。本研究では、3つの食品摂取パターンが抽出された(健康型、欧米型、日本型)。対象者を各食品摂取パターンの因子スコアによって5分位に分類し、産後うつ病に関連すると思われる種々の交絡要因で調整し、各群のオッズ比を比較した。欧米型パターンの第1分位と比較して、第2分位のみに有意なリスクの低下(オッズ比0.52、95%信頼区間0.30-0.93)が観察されたが、量反応関係は認められなかった。一方、健康型と日本型の食品摂取パターンと産後うつ病との間には関連は見られなかった。以上より、食品摂取パターンと産後うつ病との間に明らかな関連は見られなかった。本研究での知見が他の集団でも観察できるか否かを確認するためにも、さらに大規模の同様の研究が必要である。なお、本研究は妊婦を対象に妊娠中の食品摂取パターンと産後うつ病リスクとの関連を検討した世界で初めての研究である(研究代表者が、食品摂取パターンの解析プログラムの作成、統計学的解析および原稿執筆を行い、論文として発表)。
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