研究課題
これまでの強相関電子系では、電子スピン間の相互作用に由来する磁気秩序の研究や、スピン揺らぎと伝導電子の結合による近藤効果などの研究が主要テーマであった。本研究では、非クラマースΓ_3二重項基底状態の系に着目し、電荷揺らぎに由来する強相関量子相の研究を目的としている。希土類Pr化合物に見られるΓ_3基底では、電気四極子O_u、O_vと磁気八極子Txyzを持つが磁気双極子J_x、J_y、J_zを持たないため、伝導電子の混成による四極子近藤効果が期待でき、スピン揺らぎが主役を担う近藤効果とは異なる強相関量子相の出現が期待される。相転移を示さないPrMg_3を取り上げ、極低温・強磁場超音波測定を推進し、Γ_3基底に由来する低温量子相を解明する。高周波誘導炉によって育成したPrMg_3純良単結晶を用いた超音波実験を進め、弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2で10K以下でΓ_3基底に起因するソフト化を示し、120mK近傍で超音波の測定周波数に依存する超音波分散および超音波吸収を世界で初めて観測した。この超音波分散は、デバイ型の熱緩和現象で特徴づけられる電気四極子揺らぎを捉えている可能性があり、PrMg_3の低温量子相を理解するのに重要な結果が得られた。また、結晶場準位にΓ_3基底-Γ_4三重項第一励起状態を持つPrMg_3、PrPb_3、PrAg_2Inの弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2に共通の特徴的な極小が観測され、Γ_3型の歪みと結合する高次の電気十六極子を考慮することで実験結果を再現できることを明らかにし、多極子物理の新しい発展が期待できる。
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Physica B 404
ページ: 3187-3190
ページ: 3235-3237
http://www.sc.niigata-u.ac.jp/goto/