研究課題
Pr化合物のΓ_3二重項は電気四極子O_u,O_vを持ち、PrPb_3に見られるように低温で四極子秩序を示すのが通常である。他方、PrMg_3は大きな比熱係数をもち、低温まで秩序を示さず、これまではΓ_3二重項の電気四極子と伝導電子との結合による四極子近藤状態が実現していると想像されてきた。本研究では、電気四極子を観測できる超音波計測を駆使し、非クラマース二重項Γ_3基底をもつPrMg_3における多極子効果と基底状態の解明を目指した。PrMg_3の純良単結晶をブリッジマン法で育成し超音波実験を進めた。その結果、弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2において、Δ/2=28 Kに四極子感受率のみでは説明できない特徴的な極小を観測した。Γ_3二重項(0K)-Γ_4三重項(ΔK)系では、歪みε_vと結合する電気四極子O_vに加えて高次の電気16極子H_vも活性であることに着目し、四極子と16極子を同時に取り入れた多極子感受率で再現できることを明らかにした。この振る舞いは、同様のΓ_3-Γ_4系PrAg_2InとPrPb_3でも見られ、系統的に理解できることを見いだし、電気16極子の効果が本質的に重要であることを明らかにした。さらに、PrMg_3の弾性定数(C_<11>-C_<12>)/2の200mK付近で超音波の周波数に依存した超音波分散を観測した。この現象は、熱活性型の緩和時間を仮定したデバイ分散式で再現でき、非クラマース二重項と格子振動が強く結合したバイブロニック状態による散逸量子系が出現していることを示唆する。熱電能の結果から局在電子と伝導電子の混成が小さいと考えられることから、低温で非クラマース二重項と格子の結合による一重項基底を形成することで、対称性の破れ(相転移)は起きずにエントロピーを放出していくと考えられる。このように従来の伝導電子との結合による重い電子の形成、四極子近藤効果のシナリオとは異なる新しい概念を提示した。
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http://www.sc.niigata-u.ac.jp/goto/