研究課題
本研究の最終目的は高繰り返しフェムト秒レーザー照射時に形成される元素移動現象のメカニズム解明とその応用である。本年度の研究は、元素移動現象のメカニズム解明に終始した。前年度までの研究成果から、レーザー照射点付近は数千℃の高温に達しており、また温度勾配は1マイクロメートルあたり数十℃以上になることがわかった。この結果に基づき、元素移動現象のメカニズムを解明するため、まずレーザー照射時の温度分布をより詳細に明らかにした。さらに、求まった温度分布をもとに温度勾配を駆動力とした項を含む拡散方程式を離散化して解くことにより数値計算を行ったところ、実験結果とシミュレーション結果で非常によい一致を得た。これは元素移動の駆動力がレーザー照射時に生じる急峻な温度勾配であることを示している。フェムト秒レーザーによって誘起される元素移動現象に関して、多くの論文が報告されているが、その駆動力に関してはいくつかの提案はあったものの説得力のある説明はなされていなかった。今回の結果によって、そのような議論に終止符を打つことができたのに加え、元素移動現象に伴う屈折率変化を利用した光学デバイス作製などへの応用などに貢献できる結果であると考えられる。さらに、今回の実験では、ガラスの内部の二点に同時にレーザーを照射するという手法を用いたが、これは将来的にレーザーの多点同時照射により任意の温度分布をつくり、元素分布を制御する際の最も基礎的なデータになると考えられる。
すべて 2010
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