本研究では、β-FeSi_2を用いた外部量子効率1%のSiベースのLED、さらに外部量子効率50%のフォトダイオード(PD)の実現を目指す。平成21年度は、β-FeSi_2と格子整合するSi_<0.7>Ge_<0.3>基板を用いたβ-FeSi_2の高品質薄膜成長、及びそれを用いたダブルヘテロ構造LED(DH-LED)の作製を行った。Si(111)基板とβ-FeSi_2には最大5.5%の、Si(001)基板とβ-FeSi_2には最大2.0%の格子不整合があり、Si基板上に成長したβ-FeSi_2を用いるDH-LEDの特性悪化の原因となっている。本研究では、β-FeSi_2活性層の成長基板をSi基板からSi_<0.7>Ge_<0.3>(001)基板に変更し、さらに、β-FeSi_2活性層の上下層(キャリア注入層)にSi_<0.7>Ge_<0.3>層を導入することにより、β-FeSi_2活性層のヘテロ界面における格子不整合率を約0.2%にまで低減した。また、同構造のDH-LEDを作製し、発光特性を評価した。はじめに、室温における発光特性を評価した。約1A/cm^2以上で発光が確認でき、従来のSi基板上に作製したLEDにおける値(約4A/cm^2以上)から大幅に発光特性が改善した。これは、Si_<0.7>Ge03基板及びSi_<0.7>Ge_<0.3>層の導入により、β-FeSi_2活性層のヘテロ界面における格子不整合率が低減できた結果であると考えられる。さらに発光強度の温度変化から内部量子効率を見積もった。極低温における発光強度を100%とすると室温における発光強度は約1%となり、ここから内部量子効率が約1%と見積もられた。以上より、Si_<0.7>Ge_<0.3>基板を用いたβ-FeSi_2の高品質薄膜成長、及びそれを用いたDH-LEDの作製を行い、従来のSi基板上のDH-LEDと比較して大幅に発光特性を改善した。
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