本研究では、β-FeSi_2を用いた外部量子効率1%のSiベースのLED、さらに外部量子効率50%のフォトダイオード(PD)の実現を目指す。 (1)ELOG法による結晶粒径10μm超のβ-FeSi_2薄膜の実現に向けた実験 本年度は、非晶質マスクを用いたELOG法を行う前に、MBE法で作製したβ-FeSi_2結晶を種結晶として、MOCVD法によるβ-FeSi_2薄膜を作製し、その結晶性、表面状態を評価した。結晶性、表面状態の評価から、これらの薄膜は膜垂直方向には、完全に配向した結晶状態となっており、また、表面状態は原子層ステップが存在する、非常に平坦な表面であった。しかし、透過型電子顕微鏡観察により、結晶粒の大きさは種結晶と同程度の約100-500nmであり、種結晶同士が衝突する箇所では結晶の合体が生じず、欠陥となる結晶粒界が膜中に多数導入されていることが明らかとなった。以上より、大粒径β-FeSi_2の形成にはELOG法が必須であると考えられる。 (2)原子状水素援用MBE法を用いたキャリア密度低減に関する実験 MBE法で作製したβ-FeSi_2薄膜はp型伝導を示し、一般的に10^<18>~10^<19>cm^<-3>程度の残留キャリア密度が存在する。アクセプタとして振舞うSi原子空孔がこの主な原因であると考えられている。本研究では、MBE成長中に原子状水素を同時照射することにより、Si原子空孔を不活性化し、残留キャリア密度の低減を目指す。水素照射しない試料と比較して、水素照射した試料では、キャリア密度が水素照射量に応じて低減し、最小で10^<16>cm^<-3>前半のキャリア密度を持つ試料が得られた。伝導型は水素照射によりn型に変化し、移動度も約300cm^2/Vsにまで向上した。
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