研究課題
系を平衡から大きく離れた状況に系を設定することでマクロに秩序を持った時空間構造すなわち散逸構造が生じることが知られている。本研究計画ではそのような散逸構造の中でも化学力学結合の見られる系、特に空間階層構造をもつソフトマター系に着目し研究を行った。以下に具体的系に研究を進めた系を列挙する1.単一緩和時間を持つ粘弾性流体CTAB/NaSal混合水溶液系はひも状のミセルが形成されある混合比では単一緩和のMaxwell流体としてみなせることが知られていた。我々は本試料を重力に対して垂直に設置した回転円筒内部に設置し、接触線のダイナミクスを研究した。回転が低速度である場合試料は粘性流体と同様に薄膜の形成を行うのに対し、回転速度を上げることで試料がマクロに振動現象を示すことを見出した。この試料の性質をスケーリング的に議論することにより、薄膜形成から振動の生成までを統一的に理解することに成功した。このような粘弾性体の接触線ダイナミクスは化学力学結合の帰結という理学的に興味深い結果であるのみならず、塗工過程などの工学上のプロセスにおいて重要である。これらの結果に関して現在論文を執筆中である。2.マランゴニ効果界面活性剤のバルクから液滴への流れが存在する系では、マランゴニ流が液滴とバルク界面において生成し、液滴の運動が生じることが知られている。ここで液滴の運動に伴い、多くの場合液滴が大きく変形を示すことが知られている。我々はこの系にたいして変形と移動の結合を取り入れた理論構築を試みている。本研究は現在実験・理論双方から研究を進めている最中である。3.会合体形成をする系会合体が界面近傍で生成する系では、会合体の弾性の効果により液滴が変形を示すことが我々の過去の研究により明らかとなっている。我々はこの系の物理化学的性質を、表面張力測定、会合体のX線小角散乱を用いて明らかにした。これはμmから10nm程度の会合体の性質と、mmスケールの液滴の変形運動を階層横断的に明らかにしようとした仕事である。本研究の成果は論文として取りまとめられ、KEKNews(http://www.kek.jp/newskek/2010/marapr/Yuteki.html),PFトピックス(http://pfwww.kek.jp/topics/100128.html)において紹介された。また以下にあげるようなソフトマター系とは異なる散逸構造系に関しても研究を行った4.自発駆動粒子系、5.ろうそく振動子
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Journal of Physical Chemistry B 113
ページ: 15709-15714
Journal of Physical Chemistry A 113
ページ: 8164-8168
http://rheo.t.u-tokyo.ac.jp/~sumino/