1、アーミングテクノロジーを用いたスーパーCBP酵母の創製 現在、地球上に豊富に存在する木質系のバイオマスからの効率的なバイオエタノール生産システムの開発が急務となっている。木質系バイオマスは強固な構造を持っているために、その分解には高価なセルラーゼ剤を多量に必要とする。近年、酵素を細胞表層に集積したセルラーゼ発現アーミング酵母によるConsolidated bioprocessing(CBP)の実現が期待されているが、セルロース分解力の強化が課題となっている。糸状菌Trichoderma reeseiなどでは複数種のセルラーゼの発現バランスを調節することによりセルロースを効率的に分解している。昨年度の研究において、酵母におけるセルラーゼの発現バランスを最適化する手法を開発した。本研究ではセルロースの分解力をより向上させるため、Matingという手法を用いることにより、セルラーゼ発現バランス最適化二倍体酵母を創製した。 創製した二倍体酵母のセルロース分解活性の測定を行った結果、一倍体酵母と比較して約6倍向上した。次に、セルロース発現バランス最適化二倍体酵母を用い、リン酸膨潤セルロースからのエタノール発酵試験を行った。その結果、発酵開始72時間で、20g/Lのセルロースから7.6g/Lのエタノールを生産することに成功した。さらに、この二倍体酵母を用い、稲ワラからのエタノール発酵試験を行った。その結果、発酵開始72時間で7.5g/Lのエタノールを生産することに成功した。単一の微生物のみで実バイオマスからのエタノール生産に成功したのは、これが初めての報告となる。 以上の結果から、本研究で開発したセルラーゼ遺伝子発現バランス最適化手法と、二倍体化法を組み合わせることにより、様々なバイオマスから効率的にエタノールを生産する技術の確立が期待される。
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