研究課題
本研究ではマウス脳に認められるニューロン層構造の機能的意義を明らかにするため、背側終脳特異的に層構造を欠損した変異マウス(Dab1 cKOマウス)の解析を行ってきた。Dab1 cKOマウスを作成し、脳の形態学的異常が期待されたものである事を組織学的・神経解剖学観察によって確認した。本年度は、藤田保健衛生大学システム医科学研究部門(宮川剛教授)において、網羅的行動テストバッテリーを用いた神経行動学的表現型の決定を行った。実験には、対照群(Dab1^<flox/flox>)、ヘテロマウス群(Dab1^<flox/+>:Emx1^<Cre/+>)、Dab1 cKOマウス群(Dab1^<flox/flox>:Emx1^<Cre/+>)を用いた。cKOマウス群において、主に3つの特徴的な表現型が認められた。高架式十字迷路、オープンフィールド、明暗箱実験にて不安様行動が顕著に減少する点、ローターロッドおよび強制水泳試験において鬱様行動の減少が認められる点、バーンズ迷路課題において空間的参照記憶が障害される点である。興味深いことに、形態学的異常を示さないヘテロマウス群では、これらの異常が認められず、対照群と有意な差はなかった。これらの結果は、ニューロン層構造が恐怖や不安を感受するメカニズムの一端を担っていることを示唆している。ニューロンが層状に配置されないことによる近位ニューロン間の神経ネットワークの形成不全が、これらの異常を引き起こすと考えられる。一方で、Reelin-Dab1シグナルと統合失調症や双極性障害との関連が報告されているが、統合失調症様行動であるプレパルスインヒビションの低下や空間的作業記憶の低下は認められなかった。前述したように、鬱様行動も減少した。これまでReelinシグナル欠損マウスの統合失調症モデル動物としての有用性に関する議論が行われてきたが、本研究結果からこの点に関する新たな所見が得られた。
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巻: Vol.52(印刷中)(掲載確定)
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