研究概要 |
まず,特異性が悪いと安定性が崩れる現象が食い違い係数によってある意味最良の形で記述できるであろうことを修士論文にて提唱して部分的に証明してきたが,技術的困難で進展が滞っていた非正規の場合に3次元まででは問題が解決した.更に一般次元でも条件付では非正規の場合にも解決した. 或いは基本的な不変量であるDonaldson-Futaki不変量の公式を,従来私が得ていたものとX.Wang氏が得ていたversionを含む,任意の半テスト配位に対して確立し,爆発型半テスト配位への帰着が漸近安定性でも機能することを示した. そしてそのDonaldson-Futaki不変量をOkounkov bodyという凸多面体を用いて記述しなおして応用を与える共同研究がJulius Ross(Cambridge,UK)氏およびDavid Nystr om氏(Gotheborg,Sweden)氏との間で発展し,曲線の安定性のごく初等的な別証明等を得た. またFano多様体の場合の安定性問題に取り組み,Tianが導入したα不変量によるKahl er-Einstein計量の存在の十分条件の記述に対応する安定性を純代数的に証明した.これは九州大学の佐野友二助教との共同研究である.Tianは明示していなかった自己同型群への応用もある.Fano多様対の安定性問題は引き続き研究しており,部分的な成果が出つつある. 安定性に直接関係の無い話としては,特異性を食い違い係数によって記述されるマイルドさだけ許した偏極射影多様体のモジュライの分離代数空間としての構成を,松阪-Mumford(60年代),Kollar(80年代)の方法を引き継ぐ形で行ったが,コンパクト化には至っていない.
|