研究課題
本研究は新型ブドウ球菌エンテロトキシン(SE)の生物活性を分子レベルで明らかにするためまず古典的なSEであるSEAの嘔吐活性発現機序を解明することを目的としている。昨年度までの研究では嘔吐モデル動物であるジャコウネズミ(Suncus murinus)を用い、SEAのin vivoにおける動態を明らかにした。SEAは30-90分という短時間で粘膜下組織へと移行し粘膜下組織に存在する肥満細胞に結合し、さらにSEAと5-HTの二重染色およびトルイジンブルー染色により、粘膜下組織に存在する肥満細胞がSEA投与により脱顆粒を起こすことを明らかにした。このため肥満細胞の脱顆粒がSEsの嘔吐に関与している明らかにするために、SEAに近縁であるスーパー抗原TSST-1のジャコウネズミにおける動態を観、察した。ISST-1はS:EAと同様に経口投与により胃十二指腸の粘膜下組織へと移行することが明らかとなった。しかし、その標的細胞は肥満細胞ではなくMHCクラスII陽性細胞であった。このためSEAによる嘔吐は、SEAのスーパー抗原活性ではなく、粘膜下組織肥満細胞への脱顆粒誘導能によることが示唆された。また、SEAの粘膜上皮における侵入のメカニズムについても組織学的手法により検討を行っている。以上の実験結果の通り、本研究はSEAによる嘔吐発現の分子機構の解析が進み分子レベルでのブドウ球菌食中毒の防除と制御を進める端緒となり得るため、病原細菌学および食品衛生学的に高い価値を有する。また免疫学および細胞生物学に関して新たな知見が得られる可能性があり、非常に興味深く解明する必要がある。
すべて 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Journal of Veterinary Medical Science
巻: 73 ページ: 841-843
Journal of biological chemistry
巻: 285 ページ: 30427-30435