研究概要 |
黄色ブドウ球菌の産生するブドウ球菌エンテロトキシン(SEs)は嘔吐活性を持ち、ヒトおよび霊長類において経口的に摂取されると嘔吐型食中毒を引き起こす。SEAの嘔吐発現機序は長年不明であったが、前年度までの研究により、嘔吐モデル動物であるスンクスを用い、経口投与されたSEAは胃および腸管の粘膜下組織に存在する肥満細胞へと結合し、脱顆粒を引き起こすことを明らかにした。また、脱顆粒阻害剤を投与後、SEAを投与し嘔吐の有無を確認したところ、経口投与および腹腔内投与されたSEAによる嘔吐が脱顆粒阻害剤により抑制されることが明らかになった。このことからSEAの嘔吐活性発現機序において肥満細胞の脱顆粒が重要な役割を果たすことを示された。 本年度はスンクス嘔吐モデルにおいて、未だ嘔吐が確認されていない新型SEsの嘔吐活性の確認を行った。新型SEsのうちSEK,SEL,SEM,SEN,SEO,SEQをスンクスに腹腔内投与したところ、全ての新型SEsが嘔吐活性を示した。また、新型SEsの消化管内動態を古典的なSEsであるSEAと比較するため、SEIを胃内投与しその消化管内動態を免疫染色により確認した。その結果、SEAと比較すると少量ではあるがSEIも消化管の粘膜下組織へと移行することが明らかとなった。 以上の結果は、新型SEsによる嘔吐発現機序の解明に役立つだけでなく、エンテロトキシンファミリーによる食中毒の包括的な理解につながると考えられる。
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