本研究はショウジョウバエを用いて、膜タンパク質ABCトランスポーターによる概日リズム制御機構の解明を目指している。ABCトランスポーターをコードする遺伝子はショウジョウバエのゲノム上に56個あると予測されている。GAL4/UASシステムを用いた時計細胞特異的なRNAiスクリーニングにより、ABCトランスポーターの一つであるE23が概日リズムに関与していることを突き止めた。E23はその構造上から、他のABCトランスポーターと複合体を形成して機能する可能性があるため、まずE23以外のABCトランスポーターに対して網羅的なRNAiスクリーニングを行った。その結果、遺伝子発現のノックダウンが概日周期に強い効果を及ぼす3遺伝子座を同定した。これらとE23の関係性については現在解析中である。 さらに、E23が既知の時計遺伝子発現に対しどのように影響を与えているかを検討するために、E23ノックダウン系統を用いて既知の時計遺伝子に対する定量PCRを行った。その結果、E23はある特定の時計遺伝子の発現協影響を与えている可能性が示唆されだ。培養細胞を用いたアッセイによっても同様の示唆が得られた。 また、E23はショウジョウバエでの発現組織が報告されていない。そのため発現組織の同定をめざし、E23のプロモーターga14系統を確立した。この系統では、E23の発現組織でga14が発現されるため、例えばUAS-GFPと交配することで、E23の発現組織をin vivoで同定することができる。さらにこれと同時に、E23のドミナントネガティブ系統も確立することもできた。これによりE23がどのように概日リズムに関与するのかの分子メカニズムを検討できる準備が整った。来年度以降で、より具体的なメカニズムの解明を目指す。
|