本研究はショウジョウバエを用いて、膜タンパク質ABCトランスポーター、特にその一つであるE23による概日リズム制御機構の解明を目指している。まずE23はその構造上から他のABCトランスポーターと複合体を形成して機能する可能性があり、21年度までに遺伝子発現のノックダウンが概日周期に強い効果を及ぼす3つの遺伝子を同定していた。22年度はこれらとE23の関係性について膜タンパクのtwo-hybrid法であるsplit-ubiquitin法をショウジョウバエの培養細胞系で実施できる実験系の開発を行った。確立した方法を用いて、候補分子に関してE23との結合および相互での結合を検定した。その結果、どの因子もE23と直接に結合していることを示唆する結果は得られなかった。一方で、E23どうしの結合は検出されたため、E23はホモダイマーで機能している可能性が最も高いと判断した。3つの候補因子については、E23と間接的に相互作用する可能性、および、E23とは全く別の経路で概日時計に影響する可能性の両面から今後も解析を続ける予定である。次に、概日時計機構にどのようにしてE23が影響するかを調べることを目的とし、E23による輸送物質の同定を目指した。21年度の段階で候補物質と時計遺伝子への関しては、培養細胞でのアッセイ系により大まかには把握できていたため、22年度はまずこの物質の代謝経路に関与する遺伝子群をRNAiでノックダウンしリズムを測定した。その結果いくつかの系統で周期の長周期化、無周期化が確認できた。次に培養細胞でのアッセイ系を用いてE23が候補物質量を調節しているかを検討した。結果、E23はその物質を細胞から排出している可能性が得られた。つまりE23はその物質量をコントロールすることで、特定の時計遺伝子の発現を負に制御する可能性が示唆された。最後にE23の発現組織の同定を目指し、現在組織染色を行っている。これに関しては23年度以降の課題として残っている。
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