研究概要 |
当該研究課題である、ジェット変貌効果をプローブとしたクォークグルオンプラズマ物性の解明のためには、プローブとなるジェットを、LHC-ALICE実験において、高効率、高精度で測定することが重要となるが、そのために必要となるEMCAL検出器およびDCAL検出器のシミュレーションを行った。その際、アメリカのローレンスバークレー国立研究所のPeter Jacob博士のグループに参加し、多く議論することで研究を進めた。 EMCAL検出器のシミュレーションでは、LHC-ALICE実験での鉛鉛衝突(核子対あたり重心系エネルギー5.5TeV)において、ジェット事象を効率良く収集する手法を確立した。同研究結果はALICE-EMCALグループの物理性能評価報告書(Physics Performance Report, Nov., 2009)に掲載され、2009年10月にはハワイで開催された「Third Joint Meeting of Nuclear Physics Divisions of the APS and JPS」において口頭発表を行った。 DCAL検出器のシミュレーションでは、ジェット事象、特にDi-Jet事象の高精度測定において、LHC-ALICE実験にDCAL検出器を新設することが如何に重要であるかということを示し、同研究結果によって、DCAL検出器の設計パラメータの決定が行われた。また、同検出器は2010年度から、建設が始まる予定である。 さらに、2009年12月のLHC-ALICE実験本格始動時(陽子陽子衝突重心系エネルギー900GeV)には、スイスCERN研究所に滞在し、EMCAL検出器の管理、コントロールを行い、ALICE実験のデータ収集を行った。同実験の最初の結果は、The European Physical Journal Cで2010年1月に発表された(「First proton-proton collisions at the LHC as observed with the ALICE detector : measurement of the charged particle pseudorapidity density at sqrt(s)=900GeV」)。また、その際の実験データは、2010年3月に得られた陽子陽子衝突(重心系エネルギー7TeV)のデータと共に、ジェット変貌効果に着目した実験データ解析を現在も継続的に行っている。
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