ヒトにおける大脳化現象は、胎児期における脳の発達速度と発達期間が関与すると考えられてきた。本研究は、イメージング技術を用いてヒト胎児標本を資料に、ヒト胎児における大脳の内部構造の発達過程を明らかにし、ヒト固有の大脳化現象の解明することを目指す。本研究全体の対応者は、京都大学大学院理学研究科自然人類学研究室中務真人教授、慶応大学理工学部機械工学科荻原直道講師である。平成21年度は採用第1年度であり、申請書に示した方法に従い、ヒト胎児の脳解剖画像データの収集を行った。磁気共鳴画像法(MRI)撮像では、京都大学医学研究科放射線医学講座(対応者:富樫かおり教授、岡田知久講師)が管理する1.5テスラのMRI装置を用いて、同研究科附属先天性異常標本解析センター(対応者:山田重人准教授)が所有する胎生16週から満期の胎生40週までのヒ胎児標本49個体を対象に、3次元T1強調画像とT2強調画像を収集した。 本研究により、国内外で初めて、ヒト胎児における大脳皮質構造が完成する胎生期から満期までの脳解剖画像を網羅的に収集することに成功した。さらに、画像解析ソフトを用いて、ヒト胎児の脳画像の適切な解析プロトコールを確立した。これにより、来年度から本格的に実施するヒト胎児の脳形態の成長パターンの分析を行うことが可能となった。本研究の紹介と進捗状況について、第9回日本赤ちゃん学会学術集会の招待講演で発表した。また、第25回日本霊長類学会で、これまで行ってきた研究であり、かっ本研究のうえで重要なコントロール研究となる、チンパンジーにおける脳発達の研究成果を発表し、最優秀口頭発表賞を受賞した。
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