研究概要 |
中国語自然会話コーパスの作成準備として、東京日本橋の龍健信株式会社にてビジネス場面における中国語会話のデータ収集を開始した。2011年3月までにビデオ10時間、音声のみ10時間のデータを収集した。ビジネスの場面では、上司と部下の関係は非対照的であり、また交わされる会話にも明確な目的や時間的制約がある。話すこと自体が目的となりがちな日常会話の分析と対比しながらビジネス場面の分析を行うことで、より深く言語とインタラクションの関係が明らかになることが期待される。 中国語の日常会話で非常に頻繁に用いられる認識的スタンス標識「我覚得」について、特に節末部の用法に注目し、文末詞との対比や、視線の移動等のマルチモーダルな分析、さらに韻律的特徴等の分析を行った。話者交替を促進する機能があることを発見し、研究結果を『責任の文化的形成』セミナーおよびThe first International Symposium on Chinese Discourse and Languageにて発表した。文法化現象に関してインタラクションの視点を取り入れ、マルチモーダルな分析を行った研究として高く評価された。 英語と中国語の自然会話における舌打ちについて分析を開始し、日常会話における舌打ちと発話修復の関係を考察してLanguage, Culture and Mind IVにて口頭発表を行った。英語や中国語等の言語を使用した自発発話で舌打ちは頻繁に観察されるにも関わらず、まだほとんど研究がなされていない。自然な言語使用で用いられる資源の一種として舌打ちに注目したことは独創的である。
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