T.evansi感染によって生じる炎症性因子を解析するため、感染マウス脾臓を用いたPCRアレイ解析法によって、炎症性因子およびその受容体の網羅的な遺伝子発現解析を行った。その結果、急性期においてサイトカインおよびケモカインストームの発生が確認された。次に、炎症性因子の産生源となる細胞を同定するため、免疫磁気ビーズ法による細胞分画を行い、各細胞分画でのサイトカイン発現量を検討した。その結果、マクロファージが炎症性因子の主要な産生源であることが明らかとなった。一方、脾臓においてCcl8およびIl10の明らかな発現上昇が確認された。このことは、制御性樹状細胞(DCs)の分化、誘導との関連を示しているので、T.evansi感染マウスの脾臓における制御性DCsの動態を解析した。その結果、T.evansi感染マウスの脾臓において、原虫量の増加に伴い制御性DCsは増加し、一方で炎症性のDCsが減少することが明らかとなった。そこで、制御性DCsの機能を解析するため、T.evansi感染マウスへの移入試験を行ったところ、移入群において細胞数依存的な生存期間の延長および炎症性サイトカインの発現低下が観察された。さらにT.evansi感染ウシの末梢血中においてもCCL8およびIL10の発現増加が認められたことから、マウス同様にウシにおいても制御性DCsの増加が示唆された。以上の結果から、T.evansi感染動物におけう病態発生の要因である過度の炎症反応には制御性DCsの動態が深く関与することが示唆された。
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