研究概要 |
突風を受ける構造物には,一定の風を受けた場合より大きな風力が発生する「風力のオーバーシュート」と呼ばれる現象を生じるが,非定常空気力として,その体系的な現象解明はほとんど進んでいない。平成21年度は,立ち上がり時間の短い突風を受ける構造物の非定常空気力特性及び非定常空気力の発生メカニズムの解明を目的として,以下のように研究を進めた。1.立ち上がり時間の短いステップ関数的な突風を受ける基本断面(円形断面,矩形断面および楕円断面)物体の風力特性について風洞実験により検討した。その結果,突風の立ち上がり時間と突風風速および物体の断面サイズが風力のオーバーシュートの大きさと強い関係を有することを示し,それらのパラメータを組み合わせて構成した「無次元立ち上がり時間」によって,オーバーシュート風力を体系化できることなどを明らかにした。2.突風風洞実験を模擬した楕円柱周りの数値流体解析を行い,オーバーシュート現象の発生メカニズムについて検討した。その結果,風速の立ち上がり時に発生する流れ方向の圧力勾配と立ち上がり後に楕円断面の上部に発生する渦の負圧領域が風力のオーバーシュート現象の発生に大きく影響することを明らかにした。3.短時間で風速が急変する突風の自然風観測例を紹介し,実験結果を用いて,この観測状況での実構造物のオーバーシュート風力の試算例を検証した。その結果,短時間で風速が急変する突風によって建物被害や車輌事故が発生する可能性を示した。また,台風及び季節風時の強風観測データの1秒平均風速記録から,立ち上がり時間の短い突風を抽出し,風速の立ち上がり時間や風速の変化量を整理した。その結果,抽出条件により事例数は変動するが,実際に風力のオーバーシュート現象を引き起こす可能性のある立ち上がり時間の短い突風が台風および季節風時に観測されていることを明らかにした。
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