研究課題
(1)SiO_2高圧相の含水量測定の研究SiO_2の高圧相であるStishovite(St)は、Al_2O_3を含むことで0.3wt%程度まで水を含むことができることから、沈み込むプレート中のSiO_2が地球深部まで水を運ぶ可能性が考えられている。地球深部条件ではSiO_2はStからCaCl_2型やα-PbO_2型の高圧相に相転移するが、これらの高圧相が水をどれ程含めるのかはわかっていない。そこで地球深部条件でのAl_2O_3を含むSiO_2の相平衡と含水量を明らかにする。合成した3.0wt%Al_2O_3-0.3wt%H_2O-Stを約40万気圧まで加圧し、CaCl_2型に相転移させた後、常圧まで脱圧して、フーリエ変換型顕微赤外分光光度計(FT-IR)にて含水量を測定した。このようにCaCl_2型の含水量を測定したのは初めてである。それによると、相転移前後でのStとCaCl_2型の含水量に大きな違いは見られなかった。これによって、表層の水が沈み込むプレートによって地球内部に運ばれ、SiO_2を介して地球深部まで輸送される可能性が非常に高いことが考えられる。(2)高圧下での鉄-水素系(FeHx)の融点の研究地球核は鉄と軽元素(水素など)で構成され、液体の外核と固体の内族の層構造をしていることから、鉄-軽元素系の融点測定は核の温度構造を明らかにする上で非常に重要である。そこで地球核の温度構造を明らかにすべく、放射光施設SPring-8にて高温高圧下でのX線その場回折実験(BL10XU)を行い、高圧下でのFeHxの融点を測定した。高圧発生にダイヤモンドアンビルセルを用い、40万気圧までの圧力条件にてFeH_<0.3>組成の融点を決定した。これによると、水素量が少ないFeH_<0.3>組成と水素に飽和しているFeH組成の融点はほぼ違いが無いことが分かった。つまり水素はたとえ少量だとしても融点を大きく変化させ、他の軽元素と比べても核の温度構造に及ぼす影響が非常には大きいことが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
これまで報告がなかったSiO_2の高圧相であるCaCl_2型の含水量測定を行うことが出来た。これは地球深部の水を理解する上で非常に重要なことであり、本研究の目標の1つである。しかしながら、本研究の最終目標である地球深部の水の挙動をより深く議論していくためには、より高圧相であるα-PbO_2型の含水量測定が不可欠である。今後は、本研究で培った高圧相の含水量測定技術を生かして、α-PbO_2型の含水量測定も行っていく必要がある。
今回行うことが出来たCaCl_2型の含水量測定技術を基本として、より高圧で相転移するα-PbO_2型の含水量測定を行っていく。そのためにはより高圧力を発生する必要が出てくるが、それに伴い試料の大きさもより小さくなり、含水量測定が難しくなる。そこで、FT-IRよりも微小領域の測定が可能なSIMSを用いて含水量の測定を試みる。また、現在は常温での含水量測定であるが、地球内部は高温状態であるので、レーザーやヒーターを用いて高温を発生させ、高温を経験した試料の含水量測定も行っていく。それによって、より精密に地球内部の水の挙動を解明していく。
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