【プロセス3:小惑星の後期進化過程】既存の加熱脱水を受けた隕石とは別に、新たに約40個の試料を研究対象とした。XRD分析によって、そのうちの20個が、層状ケイ酸塩鉱物が分解する程度の熱変成を受けていると判明した。その20個の隕石について、組織観察(SEM・九大)、化学組成分析(EPMA・九大)、炭素質物質の結晶化度観察(顕微ラマン分光分析・茨城大)、酸素同位体組成分析(韓国)を行った。更に詳細な観察のために、現在FE-SEM(東大)、TEM(九大・茨大)観察を進めている最中である。TEMについては、9月末~12月末までの3ヶ月間にわたり、茨城大学の野口高明教授の元で、装置の使用方法・隕石観察の基礎を学ばせて頂いた。研究の中間報告として7月にフランスで行われた国際隕石学会で成果を発表した。 また、加熱脱水した隕石の熱源として、以下の3つの可能性があげられる。1.天体内部の放射性核種の壊変熱、2.天体同士の衝突による衝撃熱、3.太陽近接軌道をとることによる太陽輻射熱これまでの研究により、Belgica7904隕石について、1は否定された。衝撃組織の観察から2の可能性が最も高いと推定している。残る3の可能性を検討するため、アマチュア天文家の大塚勝仁さん国立天文台の伊藤孝士さんと、今現在、太陽近接軌道をとる3200Phaethonという小惑星の軌道計算から、最高到達温度と軌道の安定性を推定した。その結果、3200Phaethonに関しては、層状ケイ酸塩鉱物が脱水分解する温度まで到達し、且つ過去数百万年のオーダーで安定した軌道であったことが明らかにされた。 【プロセス1:小惑星の形成】 プロセス3で新たに研究対象となった隕石20個の観察中に、熱変成・水質変成共に非常に小さな影響しか受けていない隕石を発見した。TEM観察により、その隕石中に数百nmサイズの低カルシウム輝石のひげ状結晶、マンガンに富むカンラン石を確認できた。今後、nanoSIMS分析を行うために、試料数を増やしていきたい。
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