本研究課題は、地球表層に存在する鉄水酸化物やマンガン酸化物がどのように生成するのか、あるいは生成後、周囲の環境に対してどのような影響を与えるのかを調べるという目的の課題である。 本年度は、特に、海洋環境に広く存在し、様々な微量元素の濃集することで海水中の元素の溶存濃度を規定している物質である鉄マンガン酸化物に着目し、海水中の微量元素との相互作用に関して研究を行った。鉄マンガン酸化物への微量元素の吸着構造をX線吸収微細構造などを用いて系統的に調べる研究を推進していたが、その過程でモリブデンについて鉄酸化物とマンガン酸化物への吸着構造が大きく異なることを見出した。そしてさらにこの違いが、近年地球化学で注目されているモリブデンの同位体比の変動と直接関連することを明らかにした。モリブデンは、海洋環境において大きな同位体分別を起こすことが知られていたが、その要因を分子レベルの吸着構造に立脚して明らかにした点で、本研究は地球化学的に極めて重要な成果であり、特筆に値する。またタングステンについて、鉄酸化物に対する吸着構造がモリブデンと大きく異なることも示した。この結果も、海洋においてモリブデンとタングステンの挙動が異なる原因を明確に示した点で重要である。またこれらの成果の一部を査読付き英文論文として発表した。
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