研究概要 |
申請者は,体内におけるブタの卵胞発達,排卵機構を,マウスで明ちかとなった複数のマーカー遺伝子を用いることで,体内での卵丘細胞卵子複合体(COC)の機能変化と,卵子の成熟システムを明確化することを試みた. 結果,食肉処理場で得られる初期胞状卵胞由来のCOCは,本来,体内では(I)卵胞発育期による増殖期,(II)FSH刺激による成熟準備期,(III)LH刺激による成熟期の3ステージもの発達期を経て成熟卵子を排卵していることが明らかとなった.また,これちのステージは,マウスと比較して長期に渡り機能すること,それと同時に,卵子の減数分裂を長期間抑制していることが明らかとなった.しかし,マウスを含め,卵子の減数分裂の進行を抑制する分子機構は充分に明らかとなっていない. そこで,これらの原因遺伝子をラットのマイクロアレイのデータから探索した結果,COCを覆う顆粒層細胞からNuregulin 1(Nrg1)が発現,分泌していることを見出した.さらにマウスを使ったin vivo実験で,刺激を感受した卵丘細胞がSphingosin 1 Phosphateを合成分泌し,これが卵子のGPR3を介して卵子の減数分裂再開を抑制しているメカニズムが機能している可能性が示唆された.さらに,マウス,ブタの体外培養において,成熟培地にNrg1を添加した処理区で卵子の減数分裂が遅延することを見出している. 現在は,Nrg1の体内での詳細な機能を調べるために,Nrg1の顆粒層細胞特異的ノックアウトマウスを作出し,体内での詳細な機能を明らかにし,これらの結果を用いて,新たな減数分裂再開抑制のマウスモデルを構築し,これらの結果を,ブタの体内環境を模倣した,長期間減数分裂の抑制を維持する新たな体外培養系の開発に結び付けたい.
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