日本学術振興会特別研究員採用3年目に当たる本年度は、ポリマー主鎖のα位を塩素Clにて置換した新規短鎖ポリパーフルオロアルキルアクリレート薄膜の表面特性の改質を検討した。α位を塩素Clにて置換した短鎖ポリパーフルオロアルキルアクリレートはこれまで撥水撥油剤として使用されてきたが、近年環境や人体への影響が懸念されている長鎖フルオロアルキルアクリレートポリマーの代替ポリマーになりうる可能性のあるポリマーとして新規に開発されたものである。このため、この新規ポリマーの新たな有用性を示す本実験は、学術的また工業的な視点双方から重要な研究であると思われる。α位を塩素Clに置換した短鎖フルオロアルキルアクリレートポリマーは、ラジカル重合で合成し、スピンコート法により薄膜化した。その後、調製した薄膜の主鎖のα位を開始末端として制御ラジカル重合にてその薄膜再表面に電解質ポリマーを直接固定化した。その結果、表面修飾を施していない薄膜は高い撥水性を示したが、親水性ポリマーにて表面修飾を施した薄膜は親水性を示し、短鎖フルオロアルキルアクリレートポリマー薄膜の表面改質を達成した。さらに、α位を塩素Clに置換したポリマーと同数のフルオロアルキル基を有するアクリレートポリマーの共重合体薄膜において、上記ホモポリマー同様に親水性ポリマーを薄膜表面にグラフトした。その結果、共重合体ポリマーのガラス転移温度が室温より低いことに着目することで、グラフト後も室温大気中では高い撥水性を示すが、水中においては高い親水性を示す環境応答型フッ素薄膜を作成することに成功した。
|